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技術科教育




1.教育内容の変遷


(1)中学部の技術科

 1964年(昭和39年)、弱視学級開設に伴って、古市中教諭が技術科非常勤講師として着任した。当時、木造校舎の右側奥に理科室、準備室、工作室があり、工作台や工具棚もあったが、技術の専任教員はおらず、美術担当の非常勤講師が技術教員を兼任していた。この工作室は解体寸前の木造校舎にあって、すでに使用に耐えない状況にあったので、教室へ教材や模型、工具等を持ち込んで授業を行うありさまであった。

 1965年(昭和40年)4月、中学部に弱視学級が設置されたときには、木造校舎の解体が始まり、当時の女子寮の1階が中学部の仮教室となった。寄宿舎の西側にあった水治療室が理科と技術の教室、また当時の木造の講堂を間仕切りした一室が木工室となった。新校舎ができて技術教室は3階に新設された。また、2階にできた木工室は美術教室と兼用であった。

 この時から工作台を使って木材加工ができるようになり、本立て等の製作ができるようになった。次いで、電気工作、ハンダづけの試み、機械模型やスクーターのエンジンの分解・組み立てをしたり、機械の仕組み等についても少しずつ授業に取り入れることができるようになった。この頃から、技術・家庭は全盲と弱視学級をそれぞれ2グループに分け、各学年4グループとして、2時間ずつで行うようになった。

 技術科では、1年生で木工、2年生で家庭電器、3年生では機械、栽培、住居の領域を学習した。1年生には三角法による立体と平面、正面、側面図の関連を説明し、製図用紙やレーズライター用紙で組立図を利用して、本立て等の製作をした。2年生は電気基礎知識、電気器具の仕組みや取り扱い、アイロンの分解組み立て、導通(装置)テスタによる断線の診断、テーブルタップの組み立てをおこなった。3年生では機械模型を使って2サイクル、4サイクルエンジンの仕組みを学び、実物のエンジンで2サイクルと4サイクルの違いなどを説明してきた。栽培では年2回種苗の植え付けをして、春から夏、秋から冬の収穫をし、試食することも出来た。住居の領域はは家庭科の教科内容であったが、技術科でも間取りや、電気設備、上下水道などについて取り上げた。

 その後、高等部や各教科の時間割再編の関係で、中学部1年生の技術・家庭がそれぞれ1.5時間、合わせて3時間となり、さらに英語科の授業時数を増やす必要から、1年生の技術・家庭は各1時間に減らされ、現在に至っている。この授業時数の削減によって、たとえば木材加工では、1枚の板から、けがき作業、木取り、のこぎり引き等を経て組立をしていたが、現在は市販の半製品を組み立て、ニス塗りをする程度にとどまることを余儀なくされている。技術科における基本的な学習は道具の使い方にあるが、それが難しくなってきてしまっているのが現状である。1ないし1.5時間という授業時間では、領域の選定も難しく、準備と後片づけに時間を費やす実技教科の場合、授業運営が困難である。

 1991年(平成3年)頃から、情報基礎領域が取り入れられ、弱視学級では「IBM」を使って簡単な図形処理等の試みも行ってきた。この情報基礎の領域では、今後の課題として次のようなことが考えられる。

  • ア.図形処理は、「MAC」を使って、画面操作のためキーニックスやタッチウインドウ、拡大装置等の補助的なものを使えば、より効果的なことができるが、せめて2人に1台程度の設備が必要である。
  • イ.全盲生徒に対する教育では、音声装置や画面の立体化、立体コピーや、作図機器などの端末を工夫することによって、点図などの作成も可能になる。
  • ウ.MAC1台とMIDIを使って音楽を扱えるようになったが、これを進めるためには、一人1台のコンピュータが必要となる。
  • エ.情報処理教育の内容としては、ワープロ操作、簡単なプログラム作成、インターネットの利用などが考えられるが、養護・訓練と技術科の役割を明確にする必要がある。
  • オ.WINDOWS95・MACを使って、全盲生徒がアプリケーションソフトを扱えるようになれば、インターネットが楽に扱える。

(2)高等部の工業基礎


 1971年(昭和46年)頃、生徒の要望もあって、家庭科と平行して取り入れることになった。副読本として「工学一般」を取り上げ、技術の授業でやり残したものに、さらに1歩進めたものを取り入れてきた。

 当初は、1年生で家庭と工学各2時間を設けていた。授業の前半は、工学一般の中からいくつか拾い上げ、ノギスやマイクロメータ使って測る、金属材料の性質や強度に応じたビス、ナット、ボルト等の締め方・ゆるめ方、タップやダイスによるねじ切り、電気機器の故障診断、家庭における上下水設備、それに伴う各手工具の紹介や使い方等を試みてきた。後半は各自木工、電気、機械、工芸等の中から選んで、自主製作をしていった。


(3)「工学基礎」改め「生活技術」

 1994年(平成6年)から高等部が新カリキュラムになり、家庭科・工業基礎が「生活技術Ⅰ・生活技術Ⅱ」と改められた。住居学を中心に家具の寸法や居室空間のとらえ方、電気機器の故障診断、上下水設備について学習する。また高等部においても情報処理の領域ができたが、一般電化製品や最新式住居設備システムなどを中心に、家庭生活に即した情報処理教育の内容となっている。


2.教材教具の工夫


 教材教具の工夫については、関東地区視覚障害教育研究会では、次のような項目について、様々な工夫が発表されてきた。それぞれの具体的工夫の内容をここに記すことはできないが、これらの工夫が実生活でのヒントとなり、家庭生活応用されるようになれば幸いである。

  1. 木材加工 線引きやのこぎり引き、釘打ち、組立のための補助具等。
  2. 電気 ビニール被覆線の加工、ビス・ナットの締め方、ハンダ付けの方法、故障診断への道具、方法。
  3. 機械 分解・組立用の工具、ボルト、ナットの締め方、工具類、タップ・ダイス利用、仕組み理解のための模型づくり、振動や音の診断方法、触手診断。
  4. 栽培 種苗植え付けの補助具。
  5. 情報処理 キーボード、マウス以外の補助的なものの工夫、市販製品の利用。

3.技術教育における指導上の留意事項


  1. 基本的には全盲生徒と弱視生徒は分けて指導した方がよい。領域の内容によっては盲弱混合のグループでもよいが、視力のあるものが先行しがちで、好ましくない状況が生ずる。たとえば、コンピュータの場合、弱視生徒には可能なものもあるが、全盲生徒の図形処理等は中学部同様今後の課題となっている。
  2. 基本的な実技実習の繰り返しをする。
  3. 生徒の作業能力を考え、製作しやすいものを選ぶ。
  4. 生徒の能力と作業時間差への配慮。
  5. 危険を伴う作業、機器、工具の取り扱いの指導、安全な作業への心構え。
  6. 日常生活への応用、実用化へ向けての指導。
  7. 作業台上の道具と教材の置き方。
  8. 時間にゆとりを持つことによってより安全性を確保する。
  9. 各領域毎に、使用する教室と工具棚等の配置に配慮し、生徒自身が整理整頓しやすく、管理しやすいようにする。

4.弱視生徒への配慮


  1. 眼疾患種類による視覚の差はなかなか理解しにくい。日常の観察、本人への問いかけ等により判断し、その都度、配慮工夫するようにしている。
  2. 安全な作業への配慮
  3. 目を近づけての作業は危険を伴うので、工作物や工具、機器への体の位置や力の使い方等も工夫する。たとえば釘打ちするときは目を近づけなくても、手首や、肘を支点にして打つなどして、繰り返し指導する。
  4. 盲弱混合授業の場合、全盲生徒に気をとられ、弱視生徒の状態を見逃しがちである。作業の際の生徒の配置なども考慮に入れる必要がある。
  5. 拡大教科書や市販の半製品の説明書等を生徒に与える場合、それぞれに適した文字の大きさを把握しておく。サイズ等を決めておく。

5.今後の課題


 技術教育は、明治当初の裁縫、手工に始まって、現在の木工、電気、機械、栽培、情報などの領域に引き継がれているが、基本的には日常生活への応用や実用化を学習するものである。従って、実習が欠かせない教科であって、実習に必要な時間をどう確保するかが大きな問題となる。



2007/04/09