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家庭科




調理実習1調理実習2


 家庭科の教育目標は、「生活に必要な技術を習得させ、それを通して家庭や社会における生活と技術との関係を理解させると共に、工夫し創造する能力及び実践的な態度を育てる。」である。この教育目標に沿って、本校では、以下の点を特に重視して授業を進めている。


  1. 中学部においては、特に基礎的な知識の習得と、技術訓練を主体とし、家庭内における事故防止にも重点を置く。
  2. 高等部においては、中学部の学習内容をさらに高度にし、より良い家庭生活が送れるための能力と態度を身につける。


 以下、本校家庭科教育の変遷と、指導方針を中心に紹介する。


1.家庭科教育の変遷


 家庭科教育は小学部5年より始まり、中学部、高等部へと続いている。小学部の教育は非常勤講師1名が担当している。中・高等部では、1981年(昭和56年)までは専任教論1名と非常勤講師1~2名であったが、1982年(昭和57年)に家庭科専任教諭1名の定員が増え、以降2名の専任教諭により教育が行われている。

 1985年(昭和60年)までは、家庭科教室は南側に面しており、調理・染色実習室、被服実習室、作法室、及び家庭科準備室があった。1986年(昭和61年)の校舎大改修に伴って、調理実習室(6.6×5.8=38㎡)、被服・染色実習室(6.6×5.8=38㎡)、及び家庭科準備室(3.3×5.8=19㎡)となり、建物の北側に移設された。この時、従来の作法室は、1971年(昭和46年)に新設された養護・訓練関係の教室として改編された。

 この20年間における最も顕著な改革は、クラスを小さなグループに分けた少人数教育の実施と、中学部の授業時間数の削減である。一人の教員に対して、同一教材で、限られた時間内に、1グループ7~10名の生徒を対象にするのでは、授業内容が身に付かないばかりか、非常に危険が伴う。生徒の訓練が十分になされていないと、けがや火傷などの事故につながりやすい。また、大きなグループを対象とすれば、必然的に「お話家庭科」になってしまう。

 1972年(昭和47年)の学園紛争の際、高等部生徒から「もっと行動力のつく教育を」、「実技教科では、実技が身につくような教育を」などの切実な要望が提示された。これを機に、高等部普通科では1クラス12~13名だったのを2グループに分割し、さらに現在では、2クラス20名を4グループに分割して授業を行っている。中学部でも、1977年(昭和52年)から、全盲クラスを4~5名ずつの2グループに分け、その後さらに2006年(平成18年)より中学部は4名以下の小グループとしている。


2.指導内容と授業方針


 家庭科では、生活訓練重視の立場から、従来より男女共学による教育を実施してきた。独り立ちしても困らない生活ができることのみならず、人間的にバランスのとれた良き家庭人になれるようにすることも、指導における重要な課題である。

 個々の指導内容は、普通校と同水準であることが好ましいが、実践するにはかなりの授業時数が要求される。ところが、授業時数はむしろ減少してきているので、生徒にとって最も必要なことは何であるかを見極め、授業内容を徹底的に絞り込む必要がある。厳しい制約の中で指導内容を選択するに当たっては、次のような事項に特に留意している。

生徒の作品

ボード織作品(小物入れ)リバーシブルの手提げ袋
ボード織(敷物)運針

指導内容の選択の配慮


  1. 生活の知識として必要な事項の理解
  2. 生活に必要な基本技能を習得し、それを応用し発展させることができるような適切な教材の選択
  3. 中学部、高等部を通した系統的な指導


 寄宿舎生が多く、家庭での実習をする機会が少ないので、実践の中から理論を学ぶことができるよう、実習重視の指導が要求される。実習教材の選定に当たっては、次のようなことに留意している。


実習教材選定の留意点


  • 教材の発展性(応用性)・系統性
  • 生徒の能力に応じたもの
  • 適切な指導時間
    被服実習: 完成までに長時間を要する教材は不適当
    調理実習: 1回1品が原則
  • 家庭生活や将来の生活に役立つもの
  • 完成したよろこびが味わえるもの
    被服実習: 男女共に実生活で使用できる完成品
    調理実習: 全員が調理実習にかかわり、作る喜びが味わえるためには、一人当たり1台の調理台を使用して行う。

3.被服領域の指導内容


 合理的かつ個性的な衣生活を学び、自分に合った衣服を楽しく装えるように指導を行っている。知識として習得すべき事項を列挙すると次のようになる。

ミシン縫い
  • 着ること
    ア.被服の機能、
    イ.被服材料の種類と特徴
    ウ.着方の工夫
    エ.目的にあった被服
    オ.季節ごとの家族の衣服計画
  • 手入れ・保存
    ア.着用後の始末
    イ.日常的な収納方法
    ウ.季節による収納方法
    エ.洗濯・しみ抜き
    オ.アイロン、アイロンがけ
  • 衣服の購入
    ア.被服費について
    イ.既製服の選び方
    ウ. 環境への配慮(不要品の対応)

 被服教育では、学習べき基礎的な技能が多く、実習を主体とした授業が重視される。基本技能の内容を列挙する。これらはすべて日常生活ですぐ必要な事項である。

  1. 裁縫箱の使い方(用具の名称と扱い方)
  2. 物指の使い方、寸法のはかり方
  3. 裁ち方(待ち針の打ち方、ハサミの使い方、布の裁ち方)
  4. とめ方(糸通し、王結び、玉どめ、返しどめ)
  5. 縫い方(針の扱い方、指抜の使いかた、並縫い、糸こぎ、しつけのかけ方、ボタン付け、簡単なつくろい)
  6. ミシンの基礎(安全なミシンの操作、直線縫い、糸のしまつのしかた、角・曲線の縫い方)


4.食物領域の指導内容


皮むき練習1皮むき練習2  生活の質に直接影響するので、家庭科では最も重点を置いている領域である。調理実習をできるだけ多くして、栄養と食品の知識、バランスのとれた献立、及び食品衛生の知識など、具体的な体験から知識と技能を体得する。良き家庭人になる基本であり、生徒には最も人気があり、楽しみにされている領域である。包丁の操作、加熱調理(煮る、いためる、揚げものをする、電子レンジの活用)などの基本技能を反復練習して習熟するようにしている。調理の実技だけでは良き家庭人にはなり得ない。手早い準備ときちんとした後片付けが大切である。家庭科では後片付けも重視し、最後まで見届けるようにしている。













5.教材教具の工夫


 実技教科を限られた時間内で能率よく実施するには、教材の精選が肝要である。また、視覚障害者用に特に開発された用具を利用することもよいが、使いやすい便利な道具を、市販品の中から見つけ出して利用することはさらに重要である。さらに、市販品に適切な目印をつけるなどの工夫をすることで、使いやすくなることを理解させ実践力につなげている。


2014/03/18