筑波大学附属視覚特別支援学校のWEB

理科

 通常学校と同等の教科教育を行っています。特に,実験・観察においては,先達の実践と研究により,視覚に障害のある児童生徒が感覚を活用して自然現象を体感する学習方法が確立しています。本校は,これを実践しています。

感覚を活用した観察

通常学校での多く行われているアンモニアが水に非常によくとけることを示す実験 本校で行っているアンモニアが水に非常によくとけることを示す実験

 一般の学校では,大勢の児童生徒に実験・観察を見せるために,視覚で捉える方法が多く用いられています。そのため,視覚に障害のある児童生徒が同じ方法で実験・観察を行うのは困難です。本校では,可能な限り,感覚を活用した観察の方法に代えて行っています。その一例を,アンモニアが水に非常に溶けやすい性質を示す実験で示します。一般に,この実験は,次のように行います。乾いたフラスコに気体のアンモニアを入れ,乾いたガラス管と水を入れたスポイトを図のように組み立てます。スポイトの水をフラスコ内に入れると,ビーカーの水がガラス管内を上昇して,ガラス管の先端から噴水のように吹き出します。ビーカーの水には,フェノールフタレインを混ぜておくと,噴水は赤色となって吹き出します。水が噴き出すのは,アンモニアが非常によく水に溶けて,フラスコ内が減圧するためです。
 本校の実験では,気体のアンモニアが入った乾いた試験管の口を親指でふたをしたまま,試験管の口を水の中に入れています。試験管の口にふたをした親指の腹の部分が試験管に吸い付くのを感じます。写真のように,手を放しても試験管は落ちません。親指が吸い付くのは,親指の隙間から試験管内に入った少量の水にアンモニアが溶けて,試験管内が減圧するためです。




器具の製作・改良や操作方法

光の直進を調べる実験 雨粒の観察

 自然現象の全体像が把握しやすいように器具の改良や操作方法の工夫をしています。例えば,光の直進を調べる実験では,コルク板の上に点字用紙を置き,光源の光を,光の明るさの変化を音の高低の変化に変えるセンサー(感光器)で捉えます。ピン(自作)を垂直に立てて,光を遮るところ(光の経路)を探し,遮ったところにピンで点字用紙を刺します。同様にして光の経路を探し,ピンで刺して記録します。これらの穴が直線上に並ぶので,光が直進することがわかります。
 次に,雨粒の観察を紹介します。落ちてくる雨粒の大きさは,晴眼者が直接見ても,それぞれの違いは,はっきりとはわかりません。しかし,次の方法を用いると,雨粒の大きさの違いを触って観察することができます。小麦粉の中に雨粒が落ちると,その雨粒の大きさと同じくらいの小麦粉の粒ができます。この粒をお玉などに入れて加熱すると固まり,触って観察することができます。







カリキュラムの精選

骨格標本の観察

 中学校の植物や動物の学習では,多様性と共通性が学習の柱となります。その学習には,植物,動物を触ったりして知っていることが大切です。そのため,経験の少ない視覚に障害のある児童生徒には,計画的に植物,動物を観察させることが必要です。本校では,中学部1年の生物の授業に週2時間を割り当てて,4月から9月まで,校庭の木の葉の観察を中心に授業を行っています。はじめは,1つの植物の葉をじっくり触察させ,形や手触りに注目させます。残された感覚をフルに活用して観察させ,その内容を的確な表現で言い表せるように促し,観察力とともに表現力を育成します。10月から3月までは,写真のように,骨格標本の観察を行っています。基本となる種類の観察には時間をかけ,まず基本をおさえてから,様々な種類の観察を行っています。形の様子から生きて生活していた時の様子も考察します。これらの観察が,植物,動物の学習の理解を早めます。

問題を解いて考え方を身につける

 生徒は,自然現象をはじめ素朴概念で理解しようとしますが,学習が進むにつれて自然現象には規則性があり,素朴概念では理解できないことが多くあることを認識します。しかし,しばらくすると,また,素朴概念で理解しようとします。理解の定着を図るには,問題を解くことが欠かせません。問題を解いて理解を図ることにも重点をおいています。

触図を利用する

 よりよい触図を描くための校内研修を開き,検討をしています。その成果を生かした自作の触図を多数使って生徒の学習の理解に役立てています。

講座・研究会の紹介

盲・弱視児童生徒理科実験指導研修講座


 視覚に障害のある児童生徒への理科教育の理念,方法を実習中心に行う講座です。筑波大学の教員,および本校の理科の教員が講師となり,本校を会場にして行っています。参加資格は,盲学校(視覚特別支援学校)および弱視学級(特殊教育学級)教員等です。参加される方は,盲学校に赴任して1年目,2年目の先生が多く,リピーターの先生も見受けられます。例年,定員(15名)を超える応募があります。実施時期は,原則として,本校で開催する研究協議会(2月)の前日2日間です。

日本視覚障害理科教育研究会

 (Japanese Association of Science Education for the Blind:通称JASEB)
 1980年に発足し,視覚に障害のある児童生徒の理科教育の理論と実践について研究し,我が国の視覚障害理科教育の向上を図る活動を行っており,研究の成果は,毎年発行する会報に掲載しています。事務局は本校にあります。バックナンバーの閲覧と入会手続きは,本会のホームページをご覧ください。
 JASEB URL  http://www.jaseb.net

2016/08/25